木工職人・中峰 渉さん

【シェアファクトリーで人の繋がりを】~木工職人・中峰 渉さん~

中峰さん夫婦とインタビューひとみ
2018年9月取材(取材・文=土田ひとみ 写真=福井孝尚)

林業が栄えていた東吉野村。面積の96%が山林と言われているこの地に、豊富な木を活用する若者が移住してきました。木工職人として、そしてその先にある地域活性を目指して移住したのは、中峰渉(なかみね・わたる)さんです。

中峰さんは自身が木工をするだけでなく、色々な人が木工体験できる「シェアファクトリー」を作ることで、多くの方が関わるきっかけ作りをしています。どのようなきっかけで移住をしたのか、シェアファクトリー作りに至ったのか、今回は可愛らしいご家族と共にご紹介していきます。

 

幼い娘2人を連れて移住。中峰ファミリーとは?

中峰さん宅
中峰さん宅
中峰さんご夫妻と次女さん。長女さんは東吉野こども園に通っていたため不在でした。

 

ひとみ
 

こんにちは。わ、赤ちゃん!赤ちゃんと共に移住されたのですね


中峰

そうですね。小さい娘たちと移住してきました


 

中峰さん一家は、妻・長女(4歳)・次女(1歳)と中峰さんの4人家族。(2018年9月現在)2018年4月に東吉野村へ移住してきました。移住前に住んでいたのは、兵庫県の尼崎市。会社勤めでマンション暮らしと、今の生活とは大きく異なります。

 

ひとみ

どんなことがきっかけで移住しようと思ったのですか?


中峰

うーん、ぶっちゃけ移住する気はなかったんですよ(笑)


ひとみ

え!?


 

「移住をする気はなかった」という衝撃発言を聞き、まずは中峰さんがどんな人生を歩んで来たのかをお聞きすることにしました。

 

身体を壊したことをきっかけに「好きなことをして生きよう」と思った

中峰渉さん

昔から美術が好きで、大阪芸術大学でプロダクトデザインを学んだ中峰さん。「自分は何がしたいんだろう」と悩んだ末、岐阜県の飛騨高山で家具を作るメーカーに就職しました。

 

中峰

家具作りはやりたいことでしたが、分業制ということもあり肉体的にも精神的にも大変でした


 

5年勤めたメーカーを退職し、尼崎市で会社員として勤めることになりました。新たに就職した会社は働きやすく、中峰さん曰く“スーパーホワイト企業”だったそうです。

しかし、仕事で取り扱っているものを心から好きだと思えないことや、役職や責任が重くなっていくことなどにプレッシャーや疑問を抱くようになりました。そんな時、転機が訪れたのです。

 

中峰

身体を壊してしまって、今思えば大げさかもしれないけど当時は『死ぬかもしれない』って思ったんですよ。だったら、好きなことを思いっきりしようと思いましたね


 

体調を崩したことをきっかけに、「好きなこと」をはっきりと思い出したそうです。――家具作りをすること。中峰さんは家具作りを始めることにしました。

友人伝いに東吉野村を知り、土日だけ工場を借りられることになりました。こうして会社員を続けながら、週末は東吉野村に通い家具作りに勤しむ日々が始まったのです。

 

マンション暮らしに慣れていたので、移住するつもりはなかった

中峰さん宅からの眺め
中峰さん宅

東吉野村に通いながら週末だけ家具作りをしていた中峰さんですが、冒頭でお話ししていた通り、初めは移住するつもりは無かったそうです。

 

中峰

今の暮らしに不満は無かったし、通いながら好きなことだけできたらいいかなって思っていました


ひとみ

なるほど。奥様も同じお考えでしたか?


中峰

妻も僕もマンションに慣れていたので……。古民家に住むつもりはなかったですね


 

都会ではマンション暮らしが当たり前。そんな暮らしに慣れていた中峰家は、古民家に住むという選択肢は無かったそうです。

しかも女性に多い話ですが、奥様は虫が苦手だったとか。筆者自身も大の虫嫌いなのでお気持ちはよく分かります。(でも不思議なことに、ある程度慣れました)

 

背中を押してくれた友人のおかげで東吉野へ移住決意

中峰さん宅

週末だけ東吉野村へ通うことで満足していた中峰さんでしたが、友人の一言がきっかけで移住を決めたそうです。

 

ひとみ

移住のきっかけをくれたお友達は何と言ったんですか?


中峰

中途半端なことしてないで移住するならしろよ、みたいなことを言われました(笑)


 

中峰さんには東吉野村に住む、家族ぐるみで仲の良い友人がいました。彼らもまた移住組。中峰さんが東吉野村へ来るたびに泊めてくれたそうです。彼らの生活を実体験できたことも、移住への後押しだったのではないでしょうか。

友人一家に年の近いお子さんがいたこともあり、子ども同士も仲良くなれたそうです。知らない土地に移住する前に、お子さんに友達ができると、少し安心できますね。

また中峰さんは、地域おこし協力隊という制度を利用し、給与等の補助を受けながら地域貢献しつつ独り立ちまでの準備をしています。様々な制度を利用することで移住へのハードルが下がりました。

東吉野村地域おこし協力隊

 

シェアファクトリーで木工を通した人との繋がり

中峰渉さん_シェアファクトリー 外観
シェアファクトリー外観。

移住の決意が固まり、物件も決まった中峰家。古民家をリノベーションし、素敵な家も出来上がりました。そしてもう一つ、工場を改装して何やら始めようとしています。

 

中峰

工場を『シェアファクトリー』として、木工をしたい人が気軽に利用できる場にしようと思っています


 

中峰渉さん_シェアファクトリー 内観
シェアファクトリー内観。
中峰渉さん_シェアファクトリー 内観_2
上写真の反対側。奥はカフェスペースになる予定。
中峰渉さん_シェアファクトリー 内観_薪ストーブ
薪ストーブと中峰さんが腰かけように作ったスツール。
中峰渉さん_シェアファクトリー 内観_窓の風景
窓の外はきれいな川と、のどかな田舎の風景。春には桜も。
中峰渉さん_シェアファクトリー 内観_道具部屋
木工道具を収納する部屋。ドアノブは鹿の角を使用。

中峰さんは今、自分が木工をするだけではなく、他の人も工場を使いやすいようリノベーションしています。ご自身でリノベーションしたご自宅のように、田舎とは思えないオシャレな場所に生まれ変わる予感です。

 

中峰

誰かが東吉野を知るきっかけは、山が好き、川が好き、木工をしたい、何でも良いと思うんです。そのきっかけの一つになれたら嬉しいですね


 

元々東吉野村にある、歴史や美しい自然。それに加えて木工体験という新たなきっかけを生み出そうとしています。今までになかった人と人の関わりが、このシェアファクトリーから生まれそうな気がします。かつて週末だけ家具作りに通っていた中峰さんならではの発想ですね。

 

中峰

シェアファクトリーの横にカフェも併設する予定なので、まずは気軽に遊びにおいでよ、と思っています


 

シェアファクトリーに併設されるカフェは、妻・瞳さんが担当します。美味しい焼き菓子やコーヒーなどが提供されるそうです。木工をしなくても、自然の中にあるカフェを目的にしたお客さんも来そうな予感がいっぱいですね。


中峰瞳さん リトルオーブン


中峰瞳さん リトルオーブン


中峰さん夫婦

木工職人をしながらシェアファクトリーを作っている中峰さんと、幼いお子さんをおんぶしながらカフェの準備を進める妻・瞳さん。お二人が作り出す新たな場所に、温かい人と人の繋がりが生まれることでしょう。

シェアファクトリー・カフェが開業しましたら、こちらでまたお知らせしますね。お楽しみにお待ちください。

 

中峰さんの家具やシェアファクトリーなどの情報は、インスタグラム( @wataru830 )へ。

 

東吉野村への移住に興味のある方は、こちら

東吉野村へ実際に移住された方の記事は、こちら

中峰渉

1984年、和歌山県生まれ。大阪芸術大学卒業。家具メーカーでの家具製作、通販会社での商品カタログ編集業を経て、木工職人として独立。2018年に尼崎市から家族を連れて移住。オーダー家具を中心に製作している。